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2025.10.27 お知らせ

“命を橋渡しする道具” 野祭の箸を作りました

今年の野祭では、特別な箸を製作しました。

野祭は、「土地と身体を繋ぐ 野の祝祭」をテーマに、芸能・食・手仕事を通して、この土地の文化や暮らしを未来へ手渡す試みです。

自然への敬意と、命を頂くことへの感謝。その想いを、日々の食卓で感じられる“道具”として、箸をつくることにしました。

 

なぜ私たちが箸を作ろうと思ったのか

箸は、命をいただくための道具です。

山や海の恵み、畑の作物を口に運ぶとき、私たちは「いただきます」と手を合わせ、命の循環の中に生かされていることを思い出します。

 

食べるという行為は、生きることそのもの。

命を祝う祭りである野祭にとって、“命を橋渡しする道具”である箸を作ることは、とても自然な選択でした。

 

丸三漆器さんにお願いした理由

 

製作をお願いしたのは、岩手県内で伝統工芸秀衡塗(ひでひらぬり)を手がける丸三漆器さん。

秀衡塗は、平安時代末期、奥州藤原氏第3代当主・藤原秀衡が、京から職人を招き、地元産の漆と金を使って器をつくらせたことに始まるとされています。

金箔を菱形や短冊形に切り、雲形文様の上に組み合わせて飾る「有職菱紋」、その隙間に描かれる草花文には【子孫繁栄・豊作】の願いが込められています。

素朴ながら華やかな意匠は、祈りと美が重なる岩手の手仕事です。

その背景にあるのが、奥州藤原氏の浄土思想です。度重なる戦乱で失われた多くの命を平等に弔い、敵味方を問わず、すべての生きとし生けるものを供養しました。

中尊寺や毛越寺に見られる浄土庭園は、この世に極楽を再現しようとした祈りのかたち。

“命を慈しみ、平和を願う”というこの土地の精神は、野祭が大切にしている考え方と深く響き合っています。

だからこそ、野祭の箸をつくるなら、丸三漆器さんにお願いしたいと思いました。

 

丸三漆器さんの工房を訪ねて

 

秋の光が差し込む工房で、職人さんが一膳ずつ箸の天(上部)に金箔を貼る工程を見せていただきました。

まず天の部分に朱合漆(しゅあいうるし)を塗り、しっかり乾かします。

乾いた漆の上に、筆で一枚ずつ金箔を貼り付けます。

仕上げに、周囲の余分な金箔を布でやさしく拭き取ります。

完成

 

大地の恵みに手を合わせ、「いただきます」をする道具。
命への感謝をかたちにした、特別な箸。

 

箸の形は、調和と安定を象徴する六角形。

自然界に見られる結晶や蜂の巣の形に倣い、天地と人、命の循環がつながる姿を映しています。

天には、感謝と祈りの光を象徴する金箔を一枚ずつ丁寧に貼り、食卓に静かな輝きを添えました。

命を頂き、命を繋いでいく。

この箸は、浄土思想が残るこの土地で生まれた、“いただきます”という祈りの道具です。

野祭の開催に合わせて、縁日店舗および縁日オンラインショップで販売予定です。

当日は、縁日でお手に取ってご覧いただけます。

価格:2,200円(税込)

色:黒/茶/ナチュラル

素地:天然木/拭き漆仕上げ・金箔

サイズ:22.5㎝

製造:有限会社丸三漆器(岩手県一関市)

企画販売:株式会社京屋染物店 縁日

※収益の一部は、郷土芸能や地域文化の継承を未来につなぐため、野祭の開催運営費として活用させていただきます